離婚時の年金分割制度

年金分割ってどんな制度?
年金制度改正により、平成19年4月から離婚時に年金分割請求ができる制度が始まりました。
制度改正前は、婚姻中ずっと専業主婦だった女性が離婚をした場合、国民年金の老齢基礎年金部分だけしかもらえなかったのです。
老齢基礎年金部分だけ、というのは、ひとりで生計を立てるには厳しい金額です。
年金分割制度は、離婚件数が増加する一方で、こうした夫婦双方の年金受給額の格差により、離婚した女性高齢者の所得水準の低下を招いているなどの事情を背景として、女性の年金の増加を図る目的で創設されました。
この制度がスタートしてから、年金分割の件数は着実に伸びていますが、平成27年の離婚件数228,879件のうち、分割件数は27,149件と離婚件数の1割強しかありません。
調停離婚や裁判離婚の多くで分割が行われていることを考えると、協議離婚では、年金分割の合意又は請求をしないまま離婚に至っているケースが圧倒的に多いのです。
年金分割という制度を知らないまま、離婚をしている人が多いのかもしれません。
分割による増加額はそう多くはありません。
ですが、分割による増加額がわずかな場合でも、受給期間が長期に及ぶことを考えると、分割のメリットは十分にあります。
協議離婚をする場合でも年金分割の合意または請求をしておくべきです。
年金分割の対象は、平成19年4月以降に成立した離婚に限られます
年金分割が認められるのは厚生年金の報酬比例部分です。
国民年金には認められませんので厚生年金に加入していない自営業者等の妻には適用がありません。
受け取れる年金は最大で2分の1
夫が加入していた厚生年金のうち、結婚していた期間に対応する分が分割の対象になります。
「最大2分の1」なので、必ず半分受け取れるというわけではありません。
年金分割は、まず離婚当事者の合意が必要です。
合意できない場合は、裁判所に申し立て、裁判所で分割割合を決めてもらうことになります。
分割した年金はいつもらえる?
分割された年金はすぐにもらえるわけではありません。
妻自身が年金を受け取れる年齢になってからなので、離婚後すぐにもらえるわけではありません。
夫が先に亡くなったとしても分割された年金は受け取ることができます。
平成20年5月以降は自動的に2分の1に(3号分割制度)
3号分割制度は、平成20年の5月以降の離婚から適用が始まりました。
平成20年4月1日以降の婚姻期間中に第3号被保険者(専業主婦や年収130万円未満)であった期間がある場合に、自動的に夫の年金の半分が分割の対象となります。
3号分割では、当事者の合意や裁判がなくても分割されます。
自動的に分割、と書いてますが、何もしなくても自動的に分割されるわけではありません。
当事者同士の合意や裁判をする必要がない、という意味で、年金事務所での請求手続きは自分で行わなければなりません。
年金事務所での手続きは、相手がいなくてもひとりでできます。
分割請求の手続きは離婚成立後2年以内に行わなければなりません。
のんびりしてたら2年が過ぎてしまい、分割請求ができなくなっちゃった、、とならないように早めに手続きを終わらせたほうがいいです!
年金分割をした場合の年金見込み額は教えてもらえます
年齢が50歳以上の方であれば知る方法があります。
配偶者の年金の加入状況等について,年金事務所等を通して厚生労働大臣から情報の提供を受ける手続があります。
50歳以上の方は,この手続の際に希望することで、次の3つのケースにおける年金見込額の通知を受け取ることができます。
(1)年金分割を行わない場合
(2)分割の割合(按分割合)を上限の50%とした場合
(3)分割の割合(按分割合)を本人の希望する割合とした場合
年金分割・ここに注意!
年金分割制度を利用するメリットがあるのは、婚姻期間中に相手方が厚生年金を自分より多く支払っていた場合のみとなります。
自分も働いて厚生年金を支払っていて、相手より年金の支払額が多いのであれば、年金分割を請求される立場になってしまいます。
また、年金受給を受ける本人が、原則として、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計が25年以上ない場合には年金受給資格がありません。
せっかく年金分割をしても年金が受け取れないことになってしまうので気をつけてください。